地域振興大成功! 「モクモクファーム」

2009年10月29日

ゴールデンウィーク明けのある日曜日、三重県の伊賀にある「モクモク手づくりファーム」へ行って来ました。きっかけは大学の課題でこの施設について書かれた文献「新農業ビジネス 伊賀の里 ただいま大奮闘」の紹介をすることになったのですが、本を読むだけでなく実際に訪れることにしました。元々ここには大した産業が無かったのですが、20年前に地域振興をきっかけに農業をベースにしたアミューズメントパークを開設。今では年間50万人、25億円の売り上げを誇る、全国でも珍しい地域振興に成功した例として大きく取り上げられています。
ただ創業当時は決して今の様な施設を念頭に入れて作られたのではなく当初の目的は安い輸入豚肉に対抗して、地元の国産豚をブランド化するため小規模の養豚農家が投資をし合ってつくられた販売促進の施設でしかありませんでした。彼らの情熱は強くブランド肉「伊賀豚」を作ることに成功すると、「ではどのようにすればより高く売れるようになるか?」と考えハム作りを始めたのです。その後は同じように「このハムはどのようにすればより数を売れるか?」と考えバーベキューの施設とソーセージの手作り教室を設置、次に「どのようにすればバーベキューに人が呼べるだろうか?」との思いから地ビールを作り出しました。ここで注目したいのは「出来る物はすべて自分たちの手で造らなければいけない」をモットーに、企業や第3セクターなど外部からの力でなく、全て自分たちで考え発展させたことです。初めから100を考えて作られたものではなく、全ては0から始まり1を作れば次の2を、そして3、4といつまでも終わりが有りません。そこがリピーター率の高いこの施設の成功の秘訣なのでしょう。手作り感のある園内はそれほど広くないため、無理なく回ることが出来ます。
モクモクの名前の由来は創業時に建てたログハウスの「木々」と、ハムやウィンナーを作る桜チップの燻製の「もくもく」だそうです。養豚をきっかけに発展してきたこの施設では豚に重点を置き、晴れている日は園内に豚を放し飼いにしているので直接触るなど触れ合うことが出来ます。イベントはカエル競争や泥んこ運動会など季節によって盛りだくさんで、体験やセミナーの多くは無料で受けられ泊まり込みで行われる体験学習もあるそうです。そうしたことから家族連れの来場が多いですね。あいにくこの日は雨だったため、ポニー乗馬などいくつか体験できないものもありました。
来場してすぐに見物したのが「それゆけ!ミニブタ芸」。何匹かの豚が順番にハードル障害物や滑り台、サッカーなど色々な芸を披露してくれます。今回活躍したのはおそ松、ダイゴ、ブータの3匹。豚によっては活発で元気だったり、しんどそうでヨレヨレだったりとそれぞれ個性があります。人間と一緒ですね。上手くいかないこともたまにありますが、それも愛嬌がありコミカルなショーとして進んでいきます。
しばらく散歩をしているとイカダやカブトムシ取り、また温泉が湧いているので足湯も見かけました。私の印象ではここは提供されるだけの遊びでなく、自分から求めて自然と触れ合いながら遊ぶ場所だと思いました。こうした施設は主に父親や母親が子供のために来ますが、ここは子供向けのアミューズメントばかりではないので、大人も一緒になって楽しめます。親子共に笑顔の絶えない空間でした。
「モクモクファーム」の目玉は手づくり工房での体験教室です。人気があるので早目に予約をしなければ、定員オーバーしてしまいます。家族連れだけでなく、若いカップル客もいました。ここではパンやケーキなどを作れますが、今回私達が選んだのはここの伝統教室とも言えるウィンナーづくりです。価格は二人で3150円。ケチな私としては少し高いかな?と思いつつ茂子の嬉しそうな顔と、ここまで来て何もしないわけにはいかないという思いから仕方なしに参加することにしました。
まず各テーブルに材料とキットが配られます。興味があるので肉を生のまま口にしてみると、若干味付けがしてありました。まず赤身を氷と一緒にほぐしてハンバーグの様に平にします。そこにスパイスを乗せ一緒にこねてから、更に今回の味付けであるシソを加えます。最初はある程度の粘り気を持っていた肉も、氷が溶けてベチャベチャになります。見た目はまるでユッケ。そこに脂身を加えて練ると原料の完成です。次はこの原料を筒状のガンの様なものに入れ、羊の腸に空気が入らないように注意して押し込みます。少々乱暴に扱っても平気で破れません。これも興味から食べてみると表面はコノワタのようにヌルヌルしていますが、ムニムニと硬くて噛み切れませんでした。ある程度原料を入るとねじって、ウィンナーの形を作ります。慣れない間はけっこう難しいですが、次第にコツが掴め上手く作ることができました。
少し時間がかかりますが、希望者はスモークをかけることが出来ます。また作ったウィンナーは嬉しいことにその場ですぐに湯がいて食べられるし、お土産で持って帰る事も出来ます。今回は16本と結構量があったので、せっかくだから半分ずつにしました。熟成させたわけではないので味わいは結構淡白ですが、脂分がジューシーでシソの風味豊かなウィンナーになりました。初めは高いと感じていたこの体験教室も、これだけお土産が付くとお得でした。
モクモクファームでは麦を栽培し、農業の延長としてビールの生産も行っています。私が前もって本で読んだ知識だと、ここは醸造を始めたころ本場チェコのマイスターを短期間招いただけで後は素人ばかりだったそうです。その後試行錯誤の末、2006年ワールドビアカップでは金賞に輝くほど成長しました。もちろんアルコール大好きな私にとって今回最も興味深い分野になり、そこで「地ビール工房ツアー」の初級編に参加することにしました。まずは簡単なビールの説明から始まります。そしてあまり広くありませんが醸造所を順番に巡り、原料の麦やホップを見ることができます。さすがにホップは外国産になりますが水は地元の名水を使い、麦や麦芽を発芽させる作業など自分たちでできることは全て行います。ちなみに全国の地ビールの設備でも、麦芽(モルト)を作る作業所と醸造所が一緒になっているのは珍しいそうです。残った麦芽かすはビタミンなどの栄養分がまだまだ豊富に残っておりもったいないので、ここで飼育しているジャージー牛の飼料に回されます。
ビールの醸造タンクは本場チェコ製です。ここでふと気付いたのは施工が神鋼商事株式会社。これは先日訪れた「サントリー山崎」のタンクも一緒でした。こうした分野での知られざる大手会社なのでしょうか? 醸造はわずか二人で担当されているそうです。その一人の女性は元々ここでウェイトレスをされていたのですが、お客に出していたビールに興味を持ちこちらに転向。嘘のような本当の話ですが、その後ここの素晴らしいビールを作り上げるまでに成長されました。ここのコンセプトはお金でプロを連れてくるのではなく、ノウハウを吸収して素人の自分たちで作り上げていくことです。ツアーが終ると最後に試飲用のビール、飲まないお客にはビールと並行して造っている麦茶を振舞ってくれました。
もちろん酒好きの私達にはこれだけで足りるわけがなく、追加を注文することにしました。ところでここでは2種類のビールを作っており、その一つ「春うらら」ブランドが金賞に輝いたビールです。「大げさに書いているなぁ・・・」と半信半疑でしたが、一口飲んでみるとこれがフルーティーな芳香で驚かされます。正直私の地ビールの印象は「ドイツ仕込みの味わいで、美味しいけれど少し割高でどれも良く似た味わい」でしたが、印象が変わりました。ですが私が更に感動したのはもう一方のゴールデンピルスナー! こちらの方が日本のビールに近いですが色が濃く、旨味とコクが段違いなのです。ここまでくると、ただの地域振興のための地ビールとは全然違います。充分本場のビールに対抗できるかそれ以上と言っても過言ではないでしょう。本当に美味しく私は近い所に住んでいることもありますが、改めてこの生ビールを味わいに行くだけでも価値があると思います。日本のよく似たようなビールだけ飲まれている人には、ぜひこういう素晴らしいビールを体験してもらいたいと思います。感動した私達がここのビールをお土産に買って帰ったことは言うまでもありません。
他に面白かったのは「しいたけ狩り」です。かなり多くの原木が並べられており、年中収穫を楽しむことが出来そうです。ここでは取った分だけお金を払いますが、その場ですぐに焼いてくれるサービスを無料で行っています。取ったらすぐ食べる、これこそまさしく「自然そのままの美味しさを味わう」ではないでしょうか。「モクモクファーム」は一人で楽しむのではなく、家族や仲間と一緒で楽しめるものばかりですね。
お店はかなり充実しており「ジャージーミルク工房」、「パンとお菓子の工房」、「ウィンナー専門館」、「新鮮野菜果物広場」。他には焼き豚やコロッケ、野菜ジュースにジェラートもあり、ビアガーデンやブドウの樹の下で食べる産地直送バイキングレストランも人気があります。このようにたくさんのお店がありますが、嬉しいのは全てここで作られた原料だと言うことです。
実際に作られている生産者の顔までは見えませんでしたが、少しでもこの地域のことを肌で感じられたのではないかと思います。このように農業さえしっかりしていると、かなり幅広い店舗展開の可能性がありますね。自分たちの作っている農作物さえ使えば、アイデア次第でどんなお店を作る事も出来るのです。交通の便が悪く周りに何も無かった伊賀ですが、このようなアイデアと強い情熱次第で遠くからお客を呼び込み、地域の活性化と経済効果を生み出しました。今後日本全国にこうした施設が増え、地域の情報を発信することでますます地方色が豊かになって行けば面白そうですね。
P.S.さてこの日の晩の我が家の食卓には、モクモクファームで買ってきたウィンナーとビールが上りました。もちろんこちらは商品化された物だけあって、私達素人が作った物よりも美味しかったです。このようにお土産を家で食べていると、ただそこへ出かけて楽しんで来るだけでなく、こうして家に帰ってからもその時の感動が余韻として残るのは良いですよね。(写真は家で調理したモクモクファームのウィンナー)
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