培われてる真の美味しさ「ラ ヴィータ」
2009年7月10日
●「北陸伊食紀行」2日目の夜は金沢の「ラ ヴィータ」へ行って来ました。ここはオープンして11年、長く金沢のイタリアンを支え北陸で広く知られているお店です。もちろんお客の評判も良く本や雑誌で頻繁に紹介され前から噂には伺っていたのですが、食べに行くのは初めてで楽しみにしていました。さて噂の真偽はいかに!
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●店内はカウンターとテーブル席があり、広過ぎず狭過ぎずの程よい空間で良い居心地です。そして何よりも目を引くのがイタリアを感じさせる何気ない可愛い小物達。またイタリア語で「この家では猫さえもイライラする」や「友達は傘の様なもの。雨が降る時はいつも見つからない・・・」といった皮肉を交えたジョークの書かれたパネルが壁に掛けてあり楽しいです。最近のお洒落で無機質なお店にはない、ぬくもりの有る人の手作り感に溢れたお店ですね。
●お昼は分かりませんが夜のメニューは全てプリフィックスのコースのみになっています。ただし自由度は高くアンティパストとプリモは9種類から、セコンドは5種類から選べるので迷ってしまいます。まずはラディッキオとラルドの突き出し。これはラディッキオの苦味をラルドの持つ肉の香りと旨味で食べます。この組み合わせは私にとって初めてでしたが、シンプルながら分かりやすく美味しいです。確かにシンプル・・・、でも面白い! まだ一皿目ですが“美味しいものとはこうしたことを大事にしなければいけない”等と考えながら、次からの料理の期待も高まって行きました。
●次は天然ホタテのグリル サンブッカ風。アンティパストですがセコンドかと思うほどのボリュームです。この料理の興味深い所は部分によって味わい方が変わることで、まず貝柱本体は旨味。そのまわりのわたは程好い大きさに刻まれ、クニュクニュした食感を楽しめます。そしてオレンジ色の卵巣部分は柔らかく、フォアグラの様に口の中でとろけます。これらを一緒に食べても別々でも良いし、また順番を変えながら食べても良いし・・・、これはすごい! ホタテの下にあるグリルされたカブラも風味が良く、素材が新鮮で良質だからこそ出来るもう本当に素晴らしい料理です。
●ワインリストは分かりやすく写真と説明入りです。どれもお手ごろな価格設定で、同じ金額でいつもより少し上のランクを飲むことができます。今回頼んだのはアルジオラスのカンノウナウ ディ サルデーニャ コステーラ。ワインはラグレインの様なベリーやイチゴジャムのチャーミングさ。軽やかな香りと裏腹に、タンニンはそれなりにしっかり感じます。
●フォアグラのソテー 干しイモピューレ キャベツ添え。フォアグラの甘味とシャッキリ味わいのある春キャベツ、正直この組み合わせが美味しくないわけがありません! ですがそれだけでは終わりません。私達をさらに驚かせたのはイモのピューレでした。味わいは甘く、粒子が本当に細かくねったり。ついついそればかり舐めてしまいます。しかも風味豊かで食べると鼻にも抜けていきます。食べ終えるともう無くなった・・・と残念な気持ちになってしまいました。
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●プリモは白魚と能登の海藻である銀葉草(ぎばさ)のアンネリーネ。ここではサービスで、前もって客席までパスタを運び、お客にその形を見せてくださいます。料理がテーブルに運ばれてまず感じるのは、むせ返るほどの磯の香りで正直驚きます。ここまで強い料理は初めてかもしれません。まるで浜に打ち上げられた海草が匂いを放っているかのようです。恐る恐る口にしてみるとパスタと海藻のプリプリ感、そこに白魚が滑り込んできます。合わないと思っていたチャーミングな香りのワイン、コステーラとも良く合います。一旦手を休めるとフツフツと熱さと言うか元気と言うか、何かが口の中に湧いてきます。原始的な本能を刺激されるのかも・・・、不思議な魅力を持った料理です。食べ終わった後は、強すぎるとまで感じていたあのクセがなんと心地良い余韻へと変化してくれるか。いつまでも食べる者を魅了してくれます。美味しさだけではない、生物の本能としての食べる喜び!? この料理はそこまで思わせてくれました。
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●ドルチェは7つのうちから2つ選ぶことができます。茂子が選んだのはプリンと五朗島コショウのジェラート。私は例によってチーズをお願いしました。内容はブルーチーズにパッシートのカスを漬け込んだサルデーニャ産のロッシーニ。トリュフの入ったピエモンテ産のクルティン。これは一かけら食べるだけで、すごいトリュフの芳香を感じます。残念なことに食べ慣れると感じにくくなり初めの感動が薄れてしまうので、少しずつ食べなければいけません。贅沢な悩みですよね。そして食後酒にフェンネルとレモンの自家製リキュールを頂きました。フェンネルは草原を思わせる緑の香りが強く、苦味があります。大人の味ですね。お菓子にも使われてそうです。
●食事が終ってからオーナーシェフの中森 信吾さんとお話をさせて頂きました。中森さんは東京のあの老舗イタリアン「キャンティ」で修行をされていたそうです。そのせいか昔からの料理を大事にされているとおっしゃられていました。何も斬新な事をせず昔から培われてきた味わいを生み出す、と言うことでしょうか。確かに私も食べてみて、現代風の軽い綺麗な料理とは一味違うことが分かりました。ここの料理を食べると何か懐かしい物を思い出させるようでした。特にパスタでは素材が本来持っているクセを和らげるのではなく、そのまま活かして美味しさに変える技術には驚かされました。これは前にも「オマッジョ」で感心したことがあります。中森さんは美味しい料理を作ることに忠実な方なのだと思いました。残念なことにお店は中心街から少し離れているためタクシーを使わなければ行けなかったのですが、帰りに運転手さんから「おいしかったでしょ。あそこ」と言われなんだか嬉しかったです。ここはまた必ず来たいお店の一つになりました。
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P.S.「ラ ヴィータ」では金沢の事を色々とお伺いすることが出来ました。初めて知ったのですが、金沢の名前の由来は五朗島の沢でイモを洗っていたら金が出てきたそうです。なるほど・・・、でも五朗島ってどこにあるんだ? 今回金沢ではあまり観光をしなかったのですが、一軒面白いお店に行きました。創業170年の飴屋 俵屋です。色々なタイプがありますが、ここの飴の特徴は水あめの様にとろけることです。創業当時甘くて栄養のあるものを作りたいと思ったそうですが、まだ砂糖が日本には無かったので米や麦の穀物から作られました。現在もその伝統が守られて昔ながらの飴が作られています。味わった感想は甘いのですが直接的な甘さでなく、コクと旨味を感じる飴でした。食に対しての先人の知恵を垣間見ることが出来ました。(写真は飴屋の俵屋)
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